正義と微笑

numb_86のブログ

ケンカも営業も、場慣れとハッタリ

 なんだかよくわからんけど、やる気はあんだね。
 お、おす。
 で、勝算はあんのかよ!
 あ、あたぼーよっ。ケンカは場なれとハッタリだ!!


 花沢健吾ボーイズ・オン・ザ・ラン 4巻』p170

 別にケンカするわけじゃないし、したこともない地味系男子だったんですけどね、私は。
 知識やマニュアルを準備するだけでなく、ハッタリかます(不測の事態にとっさに対処する)ことも大事だよね、というお話。

限界を迎える瞬間は、必ず来る

 私の職種はいわゆる営業職なので、日々、いろんなお客さまと接します。お客さんのタイプも、案件の内容も、様々。
 そして時には、こちらの伝えてる内容を理解してくれない、あるいは納得してくれないお客さんに遭遇することも、あるわけです。意思の疎通がうまくいかないというより、最初から友好的関係を結ぼうとしてくれていない、と言えばいいでしょうか。道具、とまでは言いませんが、我々を単なる手段だとみなし、自分の願望を押し通すことに重きを置いてしまっている。そのために一方的に意見を述べてくる形になってしまう方が、いるのです。そういう方の応対には、非常に苦労します。
 また、単純にこちらの知識不足で、お客さまからの相談や質問にスムーズに対応できないことも、あります。
 そういった状況に遭遇する度に、己の力不足を痛感し、勉強しよう、努力しようと思います。もっと知識を深めなきゃいけないし、表現力や説明能力を磨かないといけない。そう考えてきました。
 だけどそういうやり方だけでは限界がある、最近はそうも思うのです。どんなに知識を覚えても、言葉を覚えても、常に完璧に対処できるわけじゃない。自分の力量を超え、限界を露呈してしまうケースが、どうしても出てきてしまうのではないでしょうか。知識が足りなかったり、先方が聞く耳を持たない状態になってしまったり。いつだって万全の状態で戦えるとは限りません。むしろ、そういう時にどう対処するかが、重要なのではないかと思います。

「ハッタリ」かまして乗り切れ

 尤もらしい理屈で納得させて一度撤退して出直したり、こちらの無知を悟られないように上手く切り返したり、話の方向を誘導して取り敢えずその場を乗り切ったり。「分からない」「上手く説明できない」「相手を納得させられない」という状況は残念ながら変わらないのだから、あとはもう、如何にして相手の印象を変えるかしかないでしょう。「こいつは頼りないな」と思われてしまうのか、「分かってる、ちゃんとしてる」と思わせるのか。まさに「ハッタリ」です。
 仕事柄、間違った情報を与えたり、説明すべきことを説明しなかったりするのは御法度なので、そことの兼ね合いは留意しなければなりませんが。
 口八丁手八丁で、その場をしのぐ。それは、社会人としてとても重要な能力だと思います。具体的には、アドリブ、とっさの対応力、緊急時(自分の実力では解決できない事態)のマニュアルを用意しておくこと、演技力、胆の太さ、などでしょうか。
 単なる虚栄心から、ハッタリをはるべきだと言ってるわけじゃありません。恥を掻きたくない、バカにされたくないという気持ちも勿論ありますが、純粋に社会人として、「ハッタリ」は大事だと思うのです。

顧客に不安を与えないために

 相手にネガティブな印象を与えないようにするというのは、仕事を進める上でとても大事だと思います。同じ状態であっても、「どう見せるか」によって結果が変わってくるのですから。営業の仕事は、商品ではなく自分を売ることだとよく言われます。商品による差別化が難しい金融業界では特に。「その商品が素晴らしいから買う」ではなく「○○さんが勧めるから、サポートしてくれるから買う」という側面は、確実にあるはずです。ですから、信用を損なったり、「こいつに相談して大丈夫か?」などと思われてしまったら、大打撃なわけです。
 まだ接客業務をする前、ほんとに新人だった頃の話ですが、尊敬する先輩に、「お客さんに不安を与えちゃダメだから」と言われたことがあります。当時はまだ就職したばかりで、何も分からなかったのですが、それでも、そのことをお客さんに知られちゃいけないと。取り敢えずその場は笑顔で承って、一度下がり、それから先輩に聞くなりすればいい。当時から納得していましたが、今はそのことを、より強く感じています。

社内での立ち振る舞い

 お客さまとの折衝だけでなく、社内での立ち振る舞いにおいても、ハッタリは重要になってくると思います。共に働く人たちにどういう印象を持たれているかはかなり大切なのではないかと、若手なりに感じています。出世とかそういうセコイ話ではなありません。
 仕事は一人では出来ず、そうである以上、周囲との連携が重要になってきます。スムーズに仕事をするうえで、人間関係はとても大事です。そして、周囲と互恵的な関係を結べるかどうかは、日ごろ同僚にどのような印象を抱かれているかで決まってくるのではないでしょうか。無暗に背伸びしてもいいことはありませんが、無防備に「分からない姿」「困ってる姿」を晒し続けるのも危険のように思います。ときには、同僚にどういう印象を与えるか意識しながら、言動を選び取るべきかもしれません。ハッタリかまして自分を大きく見せるのが得策、ということも場合によってはあるはずです。

まさに騙し合い?転職市場

 私自身の将来については何のビジョンも定まっておりませんが、転職が選択肢の一つとなってくる可能性も、ゼロではないと思います。そしてその際の最大の課題は、面接でしょう。面接こそまさに、事前の準備が通用しない、典型的な事例です。*1面接官が何を質問してくるのか、そこから何を見抜こうとしているのか、それはその場にならないと分かりません。まさに、アドリブや演技力が問われます。
 面接は一回きりの勝負であり、手持ちのリソースでいかにその場を切り抜けるかが、問われるわけです。どんなに豊富な資源を持っていても、その場で臨機応変に使えなければ意味がなく、逆に、どんなに貧弱な資源しかなくても、その一回きりの面接を上手に切り抜ければ、それに見合う実力が無くてもそれでいいのです。その意味で、場慣れとハッタリが全てと言えるかもしれません。

これがポータブル・スキル、なのかもしれない

 この記事は、私が普段の仕事を通じて感じたことをもとにして、書き始めました。そして、ふと、社内や転職でも使えるかもなんて思い、書いてきました。
 だけど、どんな状況でも役に立つのだと思います。友好的ではない相手と応酬する力、実力以上に自分を大きく見せる力、自分の至らなさを悟られずにやり過ごす力は。営業や面接に限らない。どんな立場の人であろうと、それが必要となる状況は必ず訪れる。そういったものだと思います。あらゆる領域で使えるのではないでしょうか。
 もしかしたら、これがあの、分かるようでよく分からなかった「ポータブル・スキル」という奴なのかもしれません。「知識の陳腐化が早い現代においては、「持ち運び可能な」汎用的なスキル、つまりポータブル・スキルを身につけることが大切である」。よく聞く言葉であるけれど、「ポータブル・スキル」ってのは何なのか、よく分からなかった。私がここで書いた「ハッタリをかましていく能力」は、ポータブル・スキルなのかもしれません。
 そう考えると、なかなかに苦しい今の日々も、とてもありがたい実践の場だということになります。なんと、お金を払わず、それどころかお給料をもらって、トレーニングさせてもらってるわけです。いろんなお客さんと、ときには自分にとって不都合な話もしながら、何とか目的を達成すべく折衝していく。それは本当に、ありがたい経験なのでしょう。
 お客さまへの対応に四苦八苦している今の毎日が、自分の能力を大きく育ててくれているのかもしれないのです。どうせ営業をしなければならないのなら、苦手なお客さまの相手をしなければならないのなら、それらを前向きに捉えながら仕事をしていくといいのではないでしょうか。

おまけ

 冒頭で紹介したボーイズ・オン・ザ・ランですが、その後主人公はイメチェンのため、モヒカンにします。「これでスーツ着たら最高にヤバイ奴」となった主人公は、ライバルとのケンカに向かいます。そして…!実はカポエラの達人だったライバルにフルボッコにされるのでした。「実力」あっての「ハッタリ」ということですね。分かります。


ボーイズ・オン・ザ・ラン 4 (ビッグコミックス)

ボーイズ・オン・ザ・ラン 4 (ビッグコミックス)

*1:そもそも、用意しておいた答えをただ述べていくだけでは、肯定的な評価は得られませんよね。面接では。