正義と微笑

numb_86のブログ

近代への懐疑

 会田弘継『追跡・アメリカの思想家たち』を読み終えた。


追跡・アメリカの思想家たち (新潮選書)

追跡・アメリカの思想家たち (新潮選書)


 各章ごとに、現代アメリカの主要な思想家について解説していく。著者は学者ではなく、共同通信社の記者出身であるため*1、非常に読みやすい。

 この本には、「近代」そのものに批判的な思想家が多く登場する。彼らが近代批判に至った経緯は様々だが、そのキッカケの一つに第二次世界大戦や原爆投下があるらしい(第四章)。その凄惨さ、非人道さが、それまでの人類の歩みに疑問符を投げかけるキッカケとなった。

 だけど現在では、そんなキッカケなんて無くてもごく自然に、近代に対して懐疑的な視座が身に付いていく。
 私自身、思春期の頃から、近代主義のことを胡散臭く思っていた。
 人並みに人生について悩み、アイデンティティを探し求めていたが、近代社会ではその答えは得られないような気がした。自由を尊重されて自由の真っただ中に放り投げられたが、判断のための価値基準を何も持っていない自分に気付き、途方に暮れた。
 あらゆる束縛を解体して自由を与えてくれる近代主義。だけど、自由を与えてくれはしたけれど、自由の中を生き抜くための道具は、与えてくれなかった。それこそが近代主義の陥穽なのだと、10代の自分なりに考えていた。

 それ以上のことは不勉強な自分には分からないけど、「近代」というものが行き詰まっているのは間違いないと思う。10代の自分でも分かってしまったほど、「近代」は、生きづらい。

 近代を発展させたり普及させたりする思想ではなく、近代を懐疑する思想こそ、もっと注目されるべきだ。どうすれば近代社会を進展させていけるかではなく、どうすれば近代社会を超克できるのかを、考えていくべきだ。

*1:現在は編集委員兼論説委員らしい