正義と微笑

numb_86のブログ

ある幸福な社畜の記録

 同僚たちへの感謝の気持ちを込めて。

 ***

 1月末で退職した。





 何度でも書くけど、辞めたから言うわけじゃない。本当に心から、感謝してる。


 ひきこもり、対人恐怖症、そういう過去を抱えている……。
 欠乏気味の自尊心、飢えた承認欲求、頼りない自画像、周囲からの視線にびくついている……。
 そんな男が、会社に入った。そして辞めた。
 いま俺は、まったく別の人間になっている。入った時と出てきた時とで、人が変わってしまっている。強くなった。成長した。歪んでいた心象風景が、穏やかになった。
 一体何があったのだろうか。

 もちろん、会社が全てではない。この間、プライベートでもいろいろあった。
 それでも、生活に占める会社の割合は、非常に大きい。職場は、よくも悪くも人格形成に大きな影響を及ぼす。俺の場合もそうだった。俺の「変化」を考えるうえで、あの会社は外せない重要な要素だ。


 何が俺を強くしてくれたのか。
 何が俺を成長させたのか。
 何がよかったのか。
 何がプラスに働いたのか。


 現時点で考えられることを、記録しておく。

  • 人間関係がよかった
    • 俺が配属された支店は比較的、同世代の職員が多かった。その人たちと、良好な関係を構築できた。仕事でのつながりがメインだが、プライベートでも付き合いがある。単なる仕事上の付き合いをこえた関係性。必死に働き、夜は飲みに行き、たまには週末に会ったりもする。長年、疎外感や不安感、不適切感を抱えながら生きていたが、ここにはそんなもの無かった。自分はここの一員なんだと、自然に思えた。自分を晒す→認めてもらう→安心してまた自分を晒す、そういう好循環が生まれていた。
    • そういう良好な人間関係があったおかげで、対人関係のスキルも獲得できたと思う。ある程度のものは大学で既に身に付いていたと思うが、さらにそれを磨けた。
  • 一端の社会人として働くことで、自信につながった
    • ずっと、「普通でない」ということがコンプレックスだった。同年代が当然のように知っていること、経験していることを、俺は知らない。経験していない。どうにも埋められない社会経験の差。彼らとは根本的に違う。そういう不安があった。だけど、曲がりなりにもあの場所で働いていたことで、自信が芽生えた。そういう面があったかもしれない。仕事の出来る方ではなかったけど、組織の一員としての役割を果たしていた。俺も他の人と変わらないんだ、そう思えたのかもしれない。俺も他の人と同じように社会で生きていけるのだと、不安を振り払えた。
  • 自分の成長を実感できた、かもしれない
    • 仕事のできるほうでは無かった。それでも、頭数には入っているから、次から次へと仕事が降ってきた。人並みにミスをし、失敗をし、助けてもらいながら、何とか仕事を覚えていった。その結果、最低限のことは出来るようになったし、自分なりの工夫も出来るようになっていた。段取りを考えて、上手く調整して、自分でタスクを管理して。ズブの素人が、能力を身に付けていった。曲がりなりにも一端の仕事をするようになって。自尊心を満たす効果は、十分にあったと思う。俺にも出来るんだと。
    • 当然、仕事が出来るようになれば、前述の「ここの一員なんだ」という意識はまた強まる。
  • 社会的なポジションを確保できた
    • 余計なリスクを抱えずに済んだという意味で、意外とこれも重要だったかもしれない。一応、正社員だった。後暗い商売でもない。実態はともかく、「信金職員」というのは、世間的なイメージは悪くないだろう。大学出て無職とかだと不必要に自己評価を損なう恐れがあるが、それを回避できた。
    • 収入を確保することにもつながっていた。安い給料ではあるが、生活は出来た。余計な不安を惹起せずに済んでいた部分はあるだろう。
  • 「会話」に対するコンプレックスが薄れた
    • 前述の「普通コンプレックス」とはまた別に、「会話」もまたコンプレックスだった。人と上手く話せない、つながれない、それがずっとコンプレックスだった。それが多少は、緩和された。仕事において、人とコミュニケーションが取れていた。顧客と人間関係を構築したり、顧客や業者や保証協会やらと仕事のやり取りをしたり。先輩方に比べ、顧客の心を掴んでいたかといえば、かなり怪しい。それでも、最低限のことは出来てたと思う。それもまた、無意識のうちに、自信になっていた気がする。俺はダメなんかじゃないんだ、人ときちんと関係をつくれる、コミュニケーションを取れる、そう思えた。他の平均的な社会人、一般人と比べて、別に劣ってはいないのだ。そういう自信を手に入れてたのかもしれない。


 他にも様々な要素があるとは思うが、いま思い付くのはこれぐらいだ。
 これらの恩恵に与りながら、俺は、自己を安定させていった。
 そして今、かなり安定した自画像を描けるようになっている。
 自分に対する信頼というか。俺もまあ、そこそこの人間だろ。そんな風に思える程度には、自尊心が回復してきている。健全なセルフ・イメージを形成できている。


 もちろん、ここに書かれていることを一般化するつもりはない。
 濃密な人間関係は同時に、問題も孕む。
 俺が辞めた原因は人間関係そのものではないが、それが原因で辞めていった人も、それなりにいるようだ。特に女性は大変だと思う。私の同期の女の子も、職場でのイジメで辞めていった。ほとんど会っていなかったが、聞いた話によると、かなり痩せてしまっていたとのこと。そして、俺なんかよりも重度のうつ病だったらしい。
 パワハラ、セクハラ、女性同士の人間関係、上に意見することができない風土……。働きやすい環境かといえば、かなり疑問を感じる。
 だから、一概には言えない。
 たまたま俺は運がよかった。そのことを強調しておく。