正義と微笑

numb_86のブログ

『僕にはまだ友達がいない』を読んだ

 ラノベ風のタイトルだが、ラノベではなく、作者自身の体験をもとにしたマンガ。コミックエッセイ、というのだろうか?
 この手の作品は苦手で食わず嫌いしていたけど、テーマに惹かれて読んでみた。


 この物語の主人公でもある作者(35歳)は、漫画家を目指してはいるが、それで生計を立てることはまだ出来ていない。
 漫画家志望の若者に格安の住居を提供する「トキワ荘プロジェクト」に参加し、アルバイトをしながら漫画家を目指している。
 そんな、マンガとアルバイトの日々を送っていたのだが、ふと、自分には一人の友達もいないことに気付く。友達だと思っていた地元の知り合いも、自分の知らないうちに結婚しており、そのことを自分の母親から知らされる有様。危機感を持った作者は、友達をつくるために奮闘していく。


 1ページあたりの情報量が少なく、笑いを交えて読みやすく描かれているので、すぐに読めた。
 前半では、「とにかく行動あるのみ」ということで、オフ会に参加したり、イベントに出かけたり、バーで飲んでみたり、教会に行ってみたりと、様々な世界に足を踏み入れていく。
 後半では、身近な人との関係を見直そうということで、同じアパート(寮)の住人と関わっていく。


 マンガとしてというより、友達づくりとか人間関係とかで収穫がないだろうかと期待して、読んでみた。そういう意味では、正直、あまり役に立ちそうにない。作者と同じように「友達が欲しい」と悩んでいる人たちがこの本を読んでも、あまり参考にはならない気がする。
 前提条件が違いすぎるのだ。
 たしかに作者はあまり人付き合いが得意ではないのだと思うが、それでも、かなりのハイスペックだ。20代の頃は、小中学校の臨時教師をしたり、映写技師をしたりと、職を転々としてきた。その後も、何だかんだで、自分で食い扶持を稼ぎながら夢を追っている。実際、本書の出版にも漕ぎ着けているわけで。この時点でもう、人間関係に悩む多くの人たちとは、行動力が違いすぎる気がするんだよ。生命力というか。
 それに、後半では同じアパートの住人と交流を深めていくのだが、これはもう一種の禁じ手というか。同じ建物に住んでいて、しかも漫画家志望という、共通のバックグラウンドもある。こんな隣人は、普通はいない。


 そういう訳で、読み物としてはともかく、実用的なものはあまり期待しないほうがいいかもしれない。
 ただ、前半部分で様々な世界に足を踏み入れ、それを踏まえて後半では隣人との関係を模索していくという構成は、示唆的だなあと思った。
 結局は、目の前にいる人たち一人一人とどんな関係を築いていくかが、大切なんだと思う。だけどそれを実践していくためにはまず、自分自身がいろんな経験を重ねていく必要がある。いろんな人を知り、いろんな出会いを重ね、いろんな体験をすることで、視野が広がる。そして、「人と関わることも、(いろいろあるけれど)そんなに悪いものではないかもしれない」と思えるようになる。そういう過程を経て初めて、心を開き、人と関わっていけるようになる、のだと思う。


 俺にも嫌というほど覚えがあるけれど、孤独に過ごす期間が長いと、どうしても視野が狭くなる。独善的な考えに陥りやすいというか。そういう状態は、人と関係をつくっていく際に、マイナスに働きやすい。
 だから、作者が隣人と交流を深めていけたのは、オフ会・バー・教会、といった場所で様々な経験をしたからこそなんだろうなあ、などと思った。
 そう考えると、この本を読んで「こういう人もいるんだ」と知り、視野を広げることにも、意味はあるのかもしれない。



僕にはまだ 友だちがいない 大人の友だちづくり奮闘記

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