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正義と微笑

numb_86のブログ

技術とブランド 〜富はどこから生まれるのか?〜

 どうやったらお金持ちになれるのか。楽に稼げるのか。
 多くの人が関心をもつテーマだ。
 インターネットをだらだら見ていても、「アフィリエイトで大儲けするたったひとつの方法」とか「副業を始めるときに見ておきたいサイトまとめ」みたいな記事が、ブックマークを集めている。
 今回は、「富を生み出す」ということについて、ちょっと考えてみたい。


 他の人が欲しがるもの、役に立つもの。そういうものを生み出して売る。それが商売の基本原則。多くの人は素朴に、そんなふうに信じているのではないだろうか。
 俺もそうだった。
 零細フリーランスが学んだ、商売の仕組み - 正義と微笑


 だがこれは、物事の一面しか見ていないのではないか。
 もう一つ、全く別の側面があることに、最近気が付いた。


 それは、「大して価値がないものを、価値があると思わせて売る」というアプローチ。


 こう書くと詐欺のような印象を与えてしまうが、必ずしもそうとは言えない。むしろ、世の中で発生している「富」の多くは、このアプローチによって生み出されているのではないだろうか。


 ブランドと呼ばれるものが、その代表格。同じモノであっても、ブランドの有無によって商品価値はまるで変わってくる。
 同じゲーム内容であっても、無名の会社が出せば売れないが、『ファイナルファンタジー』や『モンスターハンター』の名前が付いていれば、それなりに売れる。
 1万円の商品は、それに1万円の「価値」があるからその値段になっているわけではない。1万円の価値があると「思わせて」いるから、そうなっているのだ。
 だから、実際の価値より高く売り飛ばすことだって出来るし、逆に、ブランディングに失敗すれば、いくら価値があっても売れない。


 価値があると思わせて、売る。
 この視点に気付くキッカケとなった2つの記事を、紹介する。


 まずは、イラストレーターの寺田克也氏がネット上で自分の作品を販売したという、この記事。
 ASCII.jp:作品データが売れる「Gumroad」、プロ作家から見たらどうなんだ (1/5)


 このなかで、寺田氏は次のように発言している。

物事にどうして値段が付いていくのか。その仕組みを考えるとね、間にいろんな人がいて、初めて高額な商品が生まれていくんで。個人と個人との間での商売では、ものすごい金額は生まれない。

自分一人で価値を創り出すというのがハードル高いんだよね。「これ2ドルで?」って思うもんね。でも他人が「あなたの作品を売りたいんです」って言ってくれると安心するじゃん。作品をプロデュースなり、キュレートなりする人がいて、やっと自分の価値が確立する。

 寺田氏のことは、実はよく知らない。『花とミツバチ』のあとがき漫画に出てた人、ぐらいのイメージだ。だが、海外にもファンがいるらしいし、高名な方なのだろう。間違いなく、高い技量・実力を持っている。その方ですら、このように発言しているのだ。
 いくら高い技術があってもそれだけでは「商品」としては成立せず、プロデューサーやプロモーターがいて初めて、「商品」になる。「商品」と「作品」の違いとか、そこらへんにも関連してくるだろうし、いろいろと考えさせられる。


 もう一つは、ウェブ業界の話。
 なんでお金になることをタダで書くの? - ぼくはまちちゃん!(Hatena)

「知識そのものが単純にお金に変わるわけじゃない」っていうのも、あるかな。
(中略)
ちゃんとした社会人のみなさんからすれば、なにをいまさらなんて感じのことなんだろうけど、
「お金を稼ぐのだ」って視点でものを考えると、
エンジニアっぽいスゴイ知識やスゴイ技術なんいうのは、実はそんなに重要なことではなくて、
「金を生む力」があって初めて、知識や技術をうまくお金に換えられるみたいなんだよね…。

 これもまた、かなり重い指摘。
 やはり重要なのは技術そのものではなく、それを化けさせるスキル。


 技術そのものも大切だし、価値がある。だけど、それでカネを稼ごう、富を生み出そうとすると、話は別。


 クラウドファンディングソーシャルメディア。そういったものの発達により、誰もが表現者になれるようになった、これからは個人の時代だ、そんな風に騒がれたことがあった。
 だが現実には、そうなっていない。今も試行錯誤して模索している人は多いだろうけど。
 よいものを作った、あとは販売網や決済システムさえ整備されれば、それを売って暮らせる。
 そんな素朴な幻想は、見事に打ち砕かれてしまったのかもしれない。
 制作や創作の敷居は下がった。販売や情報発信の敷居も下がりつつある。だが、ブランディングやプロデュースは、まだまだ個人には難しい。「評価経済」という言葉が流行ったが、「評価」がそのままカネに変換されるわけではないのだ。


 富を生み出すのは、技術ではなくブランド、なのかもしれない。