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正義と微笑

numb_86のブログ

久保田政純『企業審査入門』

 財務分析の勉強がしたくて、人に借りて読んだ。
 「はじめに」に書かれているように、金融機関の人間のみならず、信用調査や与信管理に関わる全ての人に向けた、入門書。
 この分野について網羅的に書かれており、経験がなくても取り敢えず読み進められるはず。


企業審査入門 (日経文庫) (日経文庫 B 105)

企業審査入門 (日経文庫) (日経文庫 B 105)


 財務分析、定性面の分析、実在の会社を紹介しながらの業界分析、債権保全。この4つが、本書の主な内容。


 財務分析については、BSやPLについての説明というところから始めているため、初学者でも読めるようになっている。が、紙幅の都合上なのか、説明がかなりの駆け足であり、全くの初心者には厳しいと思う。
 私にとっては、財務分析についての基本的な考え方に触れることが出来たので、一応得るものはあった。
 特に資金運用表やキャッシュ・フローについては、これまであまり考えたことがなかったから、知ることが出来てよかった。
 ただ、概念としては頭に入ってきても、あまりピンと来なかった。やはり、実際に自分で与信審査を行い、経験を積んでいかないと、ダメなのだろう。いくらテキストを読んでも、実際にそれをどう活かせばいいのか分からないというのが、正直なところ。どう取り組めばいいのか、よく分からない。


 財務に関する記述で一番参考になったのは、DCFや割引についての説明。
 これらの概念については、名前だけは知っていたが、何のことだか全く分からなかった。他のファイナンス本を読んだ時にも出てきたのだが、全く意味が分からず、「ワケわかんねー」と思いながら読み飛ばしていた。謎の数式が出てくるし、強い苦手意識を持っていた。
 だが、本書の以下の説明を読んで、一気に理解が進んだ。

現在価値から将来価値を求める計算を複利といい、反対に将来価値から現在価値を求める計算を割引といいます。(81頁)

 これは非常に分かりやすい。金融機関で働いていたのだから、複利については当然分かる。それの逆パターンだと言われれば、理解しやすい。
 ただ、あと少しで自分なりに理解できそう、というところで説明が終わってしまっていて、非常に残念だった。


 定性的な分析や債権保全については、初心者でも理解できるように書かれている。というか、私自身が初心者なのだが、簡単に読み進めることが出来た。
 既に知っていることも多かったが、工場財団等の財団抵当制度など、本書で初めて知ることもあった。


 実務で経験しないと理解が深まらないなというのが、正直な感想。
 いくら各種指標やその計算式を覚えても、それを使って何をどう判断するのかが分からなければ、意味が無い。
 主体的に企業審査に携わらないと、いつまで経っても「初心者」のままなのだろう。狭義の「分析」のみを行って批評家的な立場に終始するのではなく、「判断」までを自分で行う。リスクや問題点を洗い出し、その上で、どうすべきなのか判断する。単なる「問題点探し」で終わらないようにする。
 そういう態度で場数を踏んでいくことでしか、審査の能力は高まらないのだろうな。