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正義と微笑

numb_86のブログ

ニートがクラウドソーシングを使ってみた感想

 新しいワークスタイル、新しいライフスタイル。
 そういう話題は抽象的なものになりがちだけど、具体的な取り組みや事例といったものも、もちろんある。
 シェアハウスとか、コワーキングスペースとか。


 クラウドソーシングも、その一つ。
 インターネットを介して仕事を委託・受注する仕組みで、日本でも複数のプラットフォームが存在する。クラウドソーシングがあれば、誰でも仕事をアウトソーシングできるし、逆に、自宅にいながらして仕事を探して請け負うことが出来る。
 全てのやり取りがネットで完結するクラウドソーシングは、「新しい働き方」の代表格である。これさえあれば、会社になんか入らなくてもいい、個人と市場が直接つながれる、ネットの仲間たちと協働して仕事ができる……。


 そういった「意識が高い人」のみならず、ニート・ひきこもり系の人にとっても、クラウドソーシングは福音に思えた。
 なにしろ、ネットで仕事を受注し、自宅で仕事ができるのだ。苦手な「組織」や「飲み会」や「通勤電車」に煩わされなくて済む。人並みの収入は無理でも、小遣い稼ぎくらいは出来るのではないか。そういう希望を抱く人がいても不思議ではない。


 かくいう私も、ニート期にクラウドソーシングを試してみたクチだ。
 以下、利用した結果や感想などを書いていく。
 利用したのは、「ランサーズ」。この業界では最古参だと思う。
 なお、全て2013年上半期の情報であり、今は多少変わっているかもしれない。それでも、基本的な仕組みや構造はほぼ同じだと思う。

全てがネットで完結する

 最初に会員登録しなければならないが、ネットで完結する。オプションで本人確認書類を提出することが出来るが、あくまでも任意。無料であるし、始める際の敷居は低い。一般的なウェブサービスと同じ感覚だと言える。


 ランサーズで募集されている仕事は、以下の3つに分類できる。

  1. プロジェクト方式
  2. コンペ方式
  3. タスク方式

 このうち、プロジェクト方式とコンペ方式については、個人事業主向けの内容になっている。もちろん、引きこもりやニートでも応募することは出来るが、それなりのスキルが要求されることになる。普通のニートでは、割って入るのは難しいだろう。


 ニートが狙うのは、必然的にタスク方式の仕事となる。
 これは文字通り、ひたすら作業を進めていくタイプの仕事。簡単だが、単価も低い。「内職」に近いイメージだ。
 仕事内容は、コラムや記事などの文章作成が多い。あとは、アンケートや、ネットを使ったデータ集めなど。いずれにせよ、専門的な知識やスキルは必要ない。


 仕事が完了した段階では、まだ報酬はもらえない。依頼主が仕事をチェックし、それを承認することで、ランサーズ上の自分の口座に報酬が支払われる仕組みになっている。つまり、仕事ぶりによっては、非承認となってしまい、報酬をもらえなくなってしまう恐れがある。
 ただ、私の経験上、非承認になったことはない。真面目に取り組めば、基本的には承認されるのではないだろうか。
 また、依頼主は事前に、報酬をランサーズに仮払いしている。仮払いを行わなければ、仕事を募集することは出来ない。そのため、土壇場で依頼主がカネを払わない、というリスクもない。

安すぎる単価、偏った仕事内容

 以上が、ランサーズの概要である。
 では、この仕組みを使って実際に小遣いを稼げるのだろうか。自宅にいながらにして、まとまった収入を得られるのだろうか。


 結論から言うと、かなり難しい。
 単価が低すぎるのだ。


 前述の通り、タスク方式の仕事は、誰でも出来るようなものが多い。そのため、単価が非常に低くなっている。
 記事作成のタスクの場合、高くても、1件あたり300円程度。しかもそういったものは、それなりの文字数を書かないといけない。
 記事作成の多くは、1件あたり100円前後。それでも、一定の文字制限があるのが普通だし、依頼主に承認してもらわないと報酬は得られないから、あまり適当に書くことも出来ない。ある程度の労力は割くことになる。


 案件の内容の偏りも、気になる。
 タスク方式の多くは、記事作成。それ以外の作業はあまり多くない。たまにアンケートなどの仕事があっても、他の人達が作業してしまうことで、すぐに募集終了になってしまう。どちらにせよ、簡単なものほど、単価は低くなる。アンケートの場合、1件あたり10円とかがザラだ。
 記事作成については、特定のテーマのものばかり、という印象がある。カードローンや消費者金融などのキャッシング系、育毛やダイエットなどのコンプレックス産業系、化粧品や健康食品などの美容・健康系。ここらへんが中心となる。これらのテーマに強みがある人ならいいが、そうでない場合、書き続けるのは厳しい。

高すぎる手数料

 手数料の高さもネックだ。
 以下の手数料は全て、2014年1月1日現在のもの。
 10万以下の案件の場合(タスク方式はほぼ全てがこれに該当)、2割が手数料としてランサーズに取られる。
 100円の作業をしても、実際に手元に来るのは80円なのだ。


 さらに、実際にそのお金を得るためには銀行口座に振り込んでもらう必要があるが、ランサーズ上の口座に3000円以上ないと、実行できないようになっている。
 さらにそこから、振込手数料として500円が取られる。振込先が楽天銀行なら100円。


 100円の記事を38本作成してやっと、振込最低額である3000円に到達する。
 (100-20)*38=3040
 しかもそこから振込手数料が引かれ、手元に残るのは2540円。


 この、「記事38本で2540円」を、どう捉えるかである。ちなみに、100円より安い案件も多く、その場合、もっと多くの記事を書かないといけない。


 目安だが、100円の記事で、だいたい500文字程度は書かなければならない。
 しかも、前述のように、特定のテーマで書かなければならないことが多い。
 プロジェクト方式にも文章作成の仕事はあるようだが、ざっと見た限り、1記事あたりの単価はタスク方式と大差ないようだ。


 感じ方は人それぞれだろうが、私は、あまりにも効率が悪いと思う。これをやるぐらいなら、その労力を違うこと(例えば、自分自身のブログやサイトの運営)に振り分けたほうがいいように思う。
 アフィリエイト収入を狙えるし、書いた記事は誰かに提供するのではなく、自分の実績・作品として残り続ける。

ランサーズはあくまでも、フリーランスのためのサービス

 やはり、ランサーズでまとまった小遣いを得ようとしたら、プロジェクト方式やコンペ方式で単価の高い仕事をやるしか無いのだと思う。タスク方式ではなく。
 だがこれらの仕事をやるためには、ある程度のスキルや実績が必要であり、ただのニートには難しいだろう。


 とはいえ、そのことでランサーズを批判するのはもちろん筋違いだ。
 これはもともと、個人事業主・フリーランスのためのサービスであって、ニートが小遣い稼ぎに利用するためのものではないのだから。
 創業者のインタビュー等を読んでも、フリーランスによる利用が、前提にあるように思える。


 クラウドソーシングの意義は、インターネット上に市場を創り出したことだと思う。これは画期的なことであり、これにより、技能があるにも関わらずこれまで市場から疎外されてきた人たちも、市場に参加出来るようになった。何らかの理由で在宅で働かざるを得ない人、地方に住んでいる人、などだ。
 これ自体は素晴らしいことだ。
 だが、クラウドソーシングといっても、あくまで市場であり、従来の仕事や労働と本質は変わらない。リアルの市場と同様、ここには需要と供給があり、そのバランスで価格や受注が決まる。高いスキルを持った人は好遇され、そうでない人は安く買い叩かれる。それはネットでもリアルでも同じなのだ。
 クラウドソーシングは、リアルでの市場(マーケット)を、ネット上で再現したものに過ぎない。だから、それぞれの事情で市場に適応できなかったニートたちがここで稼ごうと思っても、どだい無理な話なのだ。


 ニートとマーケット、そしてマーケットの対極としてのコミュニティ。といったことについては、また別の機会に詳しく書いてみたい。