正義と微笑

numb_86のブログ

地味で冴えないノースキルな若者は、どこで働けばいいのか

 勤め先に何人かインターンがいるのだが、みんな非常に優秀である。経歴ピカピカで正真正銘のエリートなのだが、それに見合った実力を持っている。自分が彼らと同じ年齢だったときのことを考えると、天と地ほどの違いがある。就活の結果に大きな差が出たのも、仕方ない。


 今の自分は彼らと同僚であり、立場も年齢も違う。だから何も思わないのだが、学生時代は、彼らのようなタイプに強いコンプレックスを抱いていた。学歴というより、その能力や、パーソナリティに。
 積極的に人生を生きており、年齢のわりに豊富な経験を積んでいる。自分に自信があって前向き、適切な自己主張ができて、華やかな生活を送っている。


 どうせ彼らのような人物がチヤホヤされるのだろう、自分みたいに地味で積極性のない人間は決して評価されない、いつだって派手で積極的なタイプが優遇される。彼らこそがいい思いをして、自己PRが出来ず瞬発力もなく、静かに無難に生きている自分は、低く評価される。
 昔からそう感じていたし、大学生になり、就職が近づいてくることで、より強く思うようになった。
 そうして、劣等感とか、僻みとか、不公平感とかを、溜めこんでいった。


 だが、社会人になって分かったが、彼らがチヤホヤされるのは当然なのだ。彼らのような能力こそが、社会から求められているのだから。ニーズがある、だから優遇される。それだけの話。


 企業はどこも、彼らのようなタイプを求めている。主体性やコミュニケーション能力という言葉で連想されるような若者。そのことについて色んな意見があるけど、企業は何も間違っていない。
 個別の企業がどうこうではなく、社会そのものが、そういう人材を欲している。


 産業構造が変わった。求められる人材の質が変わった。これについては色んなところで述べられている。
 もう、朴訥なタイプは生き残れないのだ。必要とされず、出来る仕事は限られている。そしてそういう仕事は、待遇が悪い。軽く扱われてしまう。需給バランスが崩れているから。
 昔は、朴訥なタイプでも生き残れたという。産業の仕組みが違ったから。コツコツと単純作業を続けること、マニュアル通りにこなすこと、それで十分だったらしい。どこまで本当かは分からないが、確かに農業や工業がメインだった時代なら、今とは求められる能力が異なったのだと思う。
 だけどもう、そういう牧歌的な時代ではなくなった。朴訥なタイプに対するニーズは、無くなりつつある。


 自主性、対人能力、思考力、バランス感覚、問題解決力。
 これからの時代は、こういったスキルやスペックが求められる。良し悪しではなく、事実として、そうなっている。


 それに伴い、求められる「努力」の種類が変わった。上記のスキルを発揮しながら努力しないといけない。
 そうではなく、ただ黙々と与えられたタスクを機械的にこなしていくタイプの「努力」は、いくらやっても報われない可能性が高い。
 どちらが偉いかではない。単に、社会から求められているかどうか、の話。評価されるかどうかの話。
 評価されないタイプの努力をいくら繰り返しても、報われにくい。


 それでも、朴訥なタイプは存在し続ける。上記のようなスキルを持たない、持てそうにない人は、存在し続ける。そういう人がいなくなった訳ではない。必ず、一定数は存在する。
 産業構造の変化に取り残された人たち。
 折り合いをつけて何とかやっている人も多いと思うが、社会に適応できず苦しんでいる人も珍しくない。
 それでも彼らも、働かなければならない。企業社会から必要とされにくいからといって、労働から降りるという訳にはいかない。


 どうすれば彼らが生きていけるのか。社会に適応し、上手くやるために、どんな選択肢があるのか。


 朴訥なままでも生きていけるべきだ、社会のほうが変わるべきだ、誰もが社会の一員だ、というのは正論だけど、そういう話はしない。
 社会の変革にも取り組むとして、それはそれとして、現実的に彼らはどうすべきなのかを、ここでは考える。


 産業構造が変わったこと、朴訥なタイプは必要とされにくいことは、紛れも無い事実。
 その事実を受け入れて、どういう対処法があるかを考える。


 独立は難しい。
 勤め人が無理なら、雇われるのではなく、自分で仕事をつくっていこう。そういう考え方もあるけど、結局、求められるスキルは変わらない。
 むしろ、会社という後ろ盾がないぶん、より高いスキルが求められるように思う。結局、就労形態がどう変わろうとも、社会から必要とされているスキルそのものは、変わらないのだから。
 稀に、勤め人としての適性はなくてもスキルのある人間、という人もいるが、それは例外。
 例外的な存在だからこそ、注目される。そう考えたほうがいいだろう。


 独立志向の派生系として、支え合い、助け合い、相互扶助、みたいなものがある。
 社会に適応できない俺達だけど、同じ悩みを持った者どうしで連帯して支え合えば、やっていけるはずさ。悩みや苦しみも共有、共感できるし。
 こういう考え方も人気だけど、やっぱり難しいと思う。人が集まって何かをする以上、それなりのコミュニケーション能力は必要となる。
 むしろ、何らかの理由で社会に適応できなかった人たちが集まるのだから、そのコミュニティを機能させるためには、より一層の胆力や対人能力が求められる。
 理念としては美しいけど、実現はかなり難しい。


 身も蓋もない話だけど、「新しい生き方」を実現できている人の多くは、そもそも、企業でもやっているだけのスキルを有している。たまたま、メンタルや価値観の理由で道を降りただけで。


 「雇われない生き方」が茨の道である以上、勤め人になるのがベターに思える。
 朴訥なままでも生きていける職を探して、そこに就く。
 スキルをあまり必要とされない仕事。もっと別の形の能力が必要とされ、朴訥な人たちにもそれなりに適性がある仕事。それを探し、そこに食い込んでいく。
 上記の「評価されないタイプの努力」でも報われやすい、そういう場所に移っていく。
 当たり前の結論かもしれないけど、これが一番妥当なんだと思う。


 では、そういう場所はどこにあるのか。思い付くままに書いてみる。


 まず、公務員。
 お役所仕事という言葉があるように、役所の仕事は定型的でマニュアル的だとよく言われる。必要以上に公務員を罵倒するような、目に余る言説も多いけど、公務員の仕事が楽に見えてしまうのも事実だ。
 仕事柄、お役所の人たちと接する機会がたまにあるけど、驚くような職員とけっこうな割合で遭遇する。丁寧でちゃんとした人たちもいるけど、ヤバめの人がかなりの割合で生息している。
 横柄でいきなりため口の人、いくら話しても要領を得ない人、受け答えが出来ない人、「おい、こいつ死にそうだぞ」と心配になるくらい無気力でアパシー状態の人。
 そういう人たちがたくさん生息しているということは、スキルがない人間でも問題なく働いていけるということだ。


 事務職。
 就労支援を受けている若者が事務職ばかり志望する、という話を聞いたことがある。ほとんどはイメージで希望しているだけだろうけど、確かに事務職は、朴訥なタイプでもやっていける可能性が高いと思う。経理や総務といった仕事。
 そういう仕事であっても、対人能力や要領の良さは問われるけど、コアではない。定型的な仕事をコツコツとこなすことがメイン。
 問題は、席が少ないということ。絶対に必要な仕事であり、無くなることはないだろうけど、必要な人員というのは限られている。そして、「事務職は女性」という暗黙の了解は根強く、男性は厳しいかもしれない。しかも、機械化や自動化が進んで、求人はますます減っていくのではないだろうか。未経験の人間が割って入るのは難しいかもしれない。


 ITエンジニア。
 これが本命だと思っている。
 エンジニアだってコミュニケーション能力は不可欠、積極性や創造性がないエンジニアは生き残れない、そういう言説があるのは知っている。そして、その通りだとも思う。ただそれは、エリートたちの話であり、名もない会社で下請けの仕事をする分には、そこまで求められないと思う。
 公務員や事務職との最大の違いは、間口が広いこと。そして、転職が一般的であること。
 間口が広い、未経験でも採用されやすい、ということは、そこでの待遇はたかが知れている。だが、転職が珍しくない業界であるため、そこから移ることもまた、容易。キャリアが硬直的ではない。
 そして、上記の「評価されにくい努力」が報われやすい職業でもあると思う。真面目に勉強し知識の幅を広げていけば、いろんな可能性が出てくる。資格が多いのも特徴。資格は所詮資格だが、それでも他の職業に比べれば、意味を持つのではないだろうか。


 『ニーキャリ』というブログ*1の管理人が、IT業界に入ることで、ニートからのキャリアアップを果たしていた。
 高卒ニートであったこの方は、書店でのアルバイトから始め、IT系のブラック企業に派遣として入り、そこから転職を繰り返し、ITや英語を勉強し、外資系のプリセールスにまで上り詰めた。
 この方も、ニートがステップアップする手段として、IT業界を勧めていた。
 ここまで上手くいかなくても、朴訥なタイプの若者にとって、ITエンジニアというのは有力な選択肢ではないだろうか。


 ちなみに『ニーキャリ』の方は、外資系の企業について、体育会系的な雰囲気がなく、飲み会も少ないという理由で、外資はむしろ元ニートには向いているかもしれないと言っていた。これは、分かる気がする。いい意味でドライであり、ウェットな付き合いがほとんどない。仕事以外の下らないイベントも存在しないし。

*1:現在は閉鎖