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正義と微笑

numb_86のブログ

エリック・シュミット他『How Google Works』日本経済新聞出版社

 Googleの会長であり、元CEOでもあるエリック・シュミットらが書いた、ワークスタイルやマネジメントに関する本。


How Google Works (ハウ・グーグル・ワークス)  ―私たちの働き方とマネジメント

How Google Works (ハウ・グーグル・ワークス) ―私たちの働き方とマネジメント


 インターネットやクラウドコンピューティングにより、世界の前提条件が変わった。企業を取り巻く環境が変わった。
 そして、「インターネットの世紀」においては、最高のプロダクトをつくることが重要となる。
 以前は、マーケティングやブランディングが意味を持った。チャネル、販路、情報、あらゆるものが貴重な時代は、そうだった。

 だが時代は変わった。今は、最高のプロダクトをつくることが最重要となる。


 プロダクトがパワフルでなければ、どんなに手の込んだマーケティングやブランディングも無力である。それはGoogleも同じ。今のGoogleほどのブランド力を持ってしても、ダメなプロダクトを浸透させることは簡単ではない。


 そして、最高のプロダクトを作るために重要となるのは、スピード。数えきれない試行錯誤を繰り返してこそ、最高のプロダクトはつくられる。
 失敗や実験のコストが小さくなったことで、それが可能になった。


 これが、「インターネットの世紀」における世界。
 本書は、そのような世界で企業が成功するためにはどうすればよいのかについて、綴られている。
 著者らは、最前線でGoogleの経営を体験してきた。セルゲイ・ブリンラリー・ペイジという二人の創業者から、多くを学んだ。それを読者に伝えるのが、本書の目的。


 とはいえ、何か目新しいことが書かれている訳でもない。ありきたりと言えばありきたりな内容が続く。
 画期的で斬新なアイディアや方法論を提供するのではなく、誰もが何となく思っていたことを言語化したり、分かりやすく説明したり、といった趣が強い。


 雑多な内容であり、あまり体系的ではないが、一つの信念が、根底に流れている。
 それは、ユーザー主義。ユーザーに価値のあるものを提供するという視点。それを徹底することでこそ、最高のプロダクトは生まれる。そして、プロダクトさえ優れていれば、他のもの(利益など)は全てついてくる。プロダクトの優位性を維持する事こそが、企業が勝ち続ける秘訣だ。


 この視点が土台であり、出発点でもある。
 では、それを実現するためにはどうすればいいのだろうか。ユーザーの役に立つ、最高のプロダクトを作り上げる。一見当たり前のことではあるが、これを徹底するのは非常に難しい。


 著者らは、「スマートクリエイティブ」と彼らが呼ぶ、新しいタイプの優秀な人材を集めるのが重要だと主張する。
 スマートクリエイティブをたくさん集め、彼らにその能力を遺憾なく発揮してもらう。


 スマートクリエイティブを集め、能力を発揮してもらい、最高のプロダクトを作る。そうすることで、成功を勝ち取る。
 この方程式を実現するためのヒントが、文化、戦略、人事、意思決定、などの観点から紹介されている。


 自由、信頼、オープン、技術主義。ここらへんが、基本的なキーワードだと思う。
 どれももっともだと思いつつ、言うは易く行うは難し、だよなあとも感じる。
 そういう意味では、あまり参考にならないかもしれない。ほとんどが、Googleだから出来たこと。あるいは、本当はGoogleですら実践できていないのかもしれない。


 大学を出てから、2つの組織で、フルタイムで働いた。
 まったく正反対の組織であり、それぞれに課題を抱えている。


 従業員を縛り付け、画一的に管理するような方法では、絶対に上手くいかない。だけど、適切なルールがなく無法状態で、各自の自主性や個人技に頼っているようでは、成功は覚束ない。

 自分はまだ、成功した組織、理想的な組織、というものを見たことがない。
 著者らが主張するように、自由や風通しのよさはとても大切。だけど、ただ自由なだけで、マネジメント不在では、組織として機能しない。

 自由とマネジメントを両立させた組織なんて、今の自分には想像できない。そんなこと可能なのだろうか。
 本書の内容がそれほど響かなかったのは、(自分にとって)現実味が無かったからかもしれない。