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正義と微笑

numb_86のブログ

「これからは個人の時代だ!」という幻想が敗北した理由

 ネットのおかげで、個人が作品をつくり、発表し、販売する手段が生まれた。だから個人でも生活していける。

 これまでは出版社やレコード会社といった中間業者が独占していたものが、個人にも開かれた。中間業者を通さなくても、個人が直接、消費者とつながれる。

 そういう言説が、一時流行ったことがある。自分も熱に浮かされた。

 アフィリエイト、ガムロード、note、クラウドファンディングウェブサービスやアプリの開発、電子書籍、LINEスタンプ、そしてユーチューバー。

 個人でも作品を発表できる。表現できる。そしてそれをマネタイズする手段もある。つくる手段もある。SNSを使えば集客だって出来る。
 それは何も間違っておらず、その通り。

 だが現実は、甘くはなかった。


 確かに売れている人はいる。それで食べている人も、いるのだろう。だがそれはごく一部だ。
 始めたタイミングがよかった、運がよかった、才能があった、そのプラットフォームに自分自身を最適化することが出来た。
 何らかの理由で「突破」することが出来ただけであり、例外的な存在。

 ほとんどの人は売れていない。
 「個人で食べていける時代」なんて、来ていない。
 なぜなのか。

 環境は整っているのに、なぜ、個人発のコンテンツは売れないのか。なぜ多くの人は、鳴かず飛ばずで終わり、消えていってしまうのか。

クオリティが高ければ売れるのか

 商品力の違いだと思っていた。

 コンテンツの質の違い。クオリティが低いから売れない。
 クオリティが低い商品にカネを出す人はいない。
 だから売れないんだと思っていた。

 結局はクオリティである。クリエイターを応援したいとか、投げ銭であるとか、社会貢献を意識した消費活動だとか、いろいろ言われても、それは主流にはならない。市場原理こそが圧倒的に強い。価値があると感じるものにしか、カネを払わない。

 個人がつくるものは、クオリティが低い。それが、売れない理由だと思っていた。


 これはこれで、間違っていないと思う。
 だが、それだけではないような気がしている。

 売れている商品と売れていない商品。実は、そんなにクオリティに差がなかったりする。
 ジャンルにもよるだろうが、ただ単にいいものが売れる、という訳ではない。そんなに単純な市場原理ではないようだ。現実の世界は。

中間業者が使う「魔法」

 結局、中間業者を通さないと売れない。
 それが実態ではないだろうか。
 創作者と消費者が直接つながってもダメで、間に、レコード会社や出版社、配給会社といった、中間業者が入ることで初めて、ビジネスとして成り立つ。


 中間業者が「何か」をしている。


 ブラックボックスがあって、そこで魔法をかけているようなイメージ。
 商品をつくて、それを販売する。その間にブラックボックスがあり、そこで魔法がかかっている。
 そんなイメージを抱いている。
 その「魔法」の正体を掴みたい。それこそが、売れるための秘訣だと思うから。
 その魔法がないと、売れない。どんなにいいモノをつくって、それを世界中に公開したとしても。


 その「魔法」は、具体的には何だろうか。

プロモーションやブランディング

 すぐに思い付くのは、派手なプロモーション。
 これによって、多くの人の目に留まり、購入してもらえる可能性が高まる。

 インターネットは世界中につながっているが、現実世界と同じで、華やかな大通りもあれば、寂れた裏路地もある。
 個人が自分一人で作品を発表しても、そんなもの、誰の目にも留まらない。どんなにクオリティが高くても、そもそも存在を認識してもらえない。

 大手の中間業者の力を借りれば、インターネットの一等地で販売してもらえる。


 それから、ブランディング
 どんなにいい商品でも、そのままでは売れない。
 売り方や見せ方を工夫することで、これはいい商品ですよと、思わせる。思い込ませる。商品そのものに変化はなくても、包装を変えるだけで、売上は大きく変わる。

 中間業者が、お墨付きを与えてくれる。無名のものなんて、誰も買いたくない。だから、中間業者がお墨付きを与えることで、安心して買えるようになる。

 大手出版社が出している小説と、聞いたこともなければ実績もないフリーター自費出版した小説。誰だって前者を選ぶ。

 みんなが欲しがるものを欲しがる、という傾向は依然として強い。みんなが買っているなら安心だ、という心理。

 むしろインターネットによって、その傾向は強まっているのかもしれない。
 口コミをチェックしたり、SNSでの評判に影響を受けたり。
 そうすると「売れているものがますます売れる、人気があるものがますます人気になる」という状態になる。

 となれば、派手な見せ方やブランディングのノウハウを持った中間業者の役割は、大きくなる。

最後の機能を手に入れる

 プロモーションとブランディング。この2つが思い浮かんだけど、これが正解かどうかは分からない。
 だが、何かブラックボックスがあり、そこで魔法がかけられているのは確かだ。
 中間業者は、絶対に必要。個人単独では、とても食えない。市場で戦えない。
 なぜ中間業者が必要なのかは、分からない。分かっているのは、とにかく必要だということ。


 中間業者が担ってきた、発表や課金という機能は、個人が手にした。
 だがそれだけでは、ダメなんだ。中間業者の機能は、それだけではない。他にも機能がある。だから、個人が市場で食っていきたければ、その機能も手に入れないといけない。
 それが何かは、今の自分には分からない。

 だがその「何か」があるのは間違いないし、それを手に入れなければ、「個人が食える時代」はやってこない。