読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

正義と微笑

numb_86のブログ

飯野賢治『ゲーム Super 27years Life』

 『Dの食卓』などで有名なゲーム制作者、飯野賢治の自伝。副題にもある通り、出版当時、著者はまだ27歳。著者の一周忌に合わせて、2014年に文庫化された。


ゲーム―Super 27years Life

ゲーム―Super 27years Life


 飯野賢治のことは、リアルタイムでは知らなかった。『Dの食卓』というタイトルは知っていたが、どんなゲームで、どんな人が作っているのかは、まったく知らなかった。
 後年、ネットの記事でその名前を知ったが、過激な言動で当時のゲーム業界を騒がせていたらしい。


 著者やそのゲームに対する思い入れは何もなかったが、だからこそ、先入観なく読めたというのはあると思う。
 ビッグマウスとして有名だったようだが、本書からは、そういう印象は受けなかった。
 確かに自己主張は強いのだが、鼻につく感じはなかった。


 口述筆記のような文体で、幼少時代から執筆時点までの半生が語られている。
 文体のせいか、かなり主観的な印象を受けた。当時のことを事実に基いて記していく、というより、著者の感情が全面に出てくる。

 過激な言動で騒がせた、と書いたが、そういった様々な事件についても、あまりセーブせず書きたいように書いてある。
 当時の状況が具体的に描かれているし、関係者の名前もそのまま出てくる。著者の「怨敵」であるソニーとの経緯も、詳しく書かれている。

 ソニーとの決裂は有名なエピソードだが、他にも、かなり自由に、好き勝手にやっていたらしい。


 にも関わらず、著者には多くの人が付いてくる。本書を読んで強く思った点だ。
 離れていく人も多いが、仲間になる人も多い。
 人望はあるのだ。

 それは学生時代からそうで、「あまり友達はいなかった」と述懐するわりには、関わるコミュニティの先々で仲間をつくる。ちゃんと関係性をつくっている。


 自分勝手に生きているように見えるし、事実、本書のなかでそういう生き方を奨励している。
 それにも関わらず人望があるのは、なぜだろう。


 溢れ出る行動力が人を惹きつける、というのはあると思う。
 著者は、決して口だけではなく、行動が伴っている。偉そうなことを言ってばかりだとしても、それに見合うだけの実績がある。実行力や胆力がある。決して中途半端にはしない。


 本書の出版時点で27歳だが、著者の行動力は、とても27歳のそれではない。
 自分は、本書を読んでいる時、著者がまだ27歳だということを忘れていた。もっともっと、自分よりも歳上だと無意識に感じていた。

 本書の最後で今後の展望を語っており、そこで「2年後に29歳になるから、そこで自分の集大成の作品を出すんだ」と語っており、そこでやっと、著者がまだ27歳なのだということを思い出した。
 それくらい、濃密で熱量をもった人物であり、だからこそ人も集まるのではないか。
 そんなことを考えた。


 ちなみに、著者は高校を中退している。大検取得に失敗しており、最終学歴は中卒。
 中退後は「ただ家にいるってことがバツグンに多かった」らしいから、今で言うニートだったのかもしれない。アルバイトや就職をしても、長く続かず。
 そして、中学生の時に自作のゲームでプログラミングコンテストに入賞したことを思い出し、ゲーム業界に飛び込む。その後、紆余曲折を経て、ゲーム会社を設立。気鋭のゲームクリエイターとして、時代の寵児となる。

 当時、そして現在、こういった「きれいではないキャリア」の人たちが、どれくらい第一線で活躍しているのかは、分からない。
 だがそれでも、同じく高校を中退しており、「きれいではないキャリア」を背負って生きている者としては、著者のような存在には勇気づけられるものがある。