大学生の頃に読んだものを、再読。
タイトル通りで、初学者にも分かりやすく、経済学の考え方や役割が紹介されている。
特定の分野に注力せず、幅広いテーマを扱っているのも素晴らしい。

- 作者: 小塩隆士
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2002/03
- メディア: 新書
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最近、経済政策や経済思想に関心がある。
自分なりに勉強しているが、意外と基本的な理解が疎かになっていたりする。自分の興味関心には直結しないことでも、基礎くらいは押さえておくべきだろう。
そう思い、大学生の頃に読んだ本書を思い出し、引っ張り出してきた。
高校生を主なターゲットにしているだけあって、予備知識無しでも理解できるように書かれてある。
それでいて内容はしっかりしており、高校生だけでなく、「経済学の基本を知りたい」と考える全ての人のニーズに応えるものだと思う。
経済学はとかく論争が付き物で意見の対立ばかりだが、本書では著者なりに中立に書こうと心掛けているのが伝わってくる。
そういう意味でも、入門書として適していると思う。
いい意味で教科書的な構成で、スムーズに経済学の世界に入っていけるようになっている。
まずは、家計や企業といった個々のプレイヤーがどのような経済活動を行うかという話から始まり、需要曲線や供給曲線、それを成立させるための費用逓増や限界費用について解説しつつ、市場が持つ機能について述べる(ミクロ経済学)。
続いて、市場が上手く機能しないケース、市場メカニズムでは解決しない問題があることを述べ、政府の必要性について話をつなげていく。
その上で、経済全体の動きの捉え方や、政府が果たすべき役割やそのための手段について、解説していく(マクロ経済学)。
本書は「経済入門」のための本ではなく、まさに「経済学入門」の本だと思う。
経済学という学問はどのような問題を扱い、どのように考えるのか。そういった、経済学の考え方や役割が紹介されている。
経済学は論争ばかりと書いたが、代表的な論争のトピックは本書でほとんどカバーされている。
民営化や規制緩和の是非、財政赤字、世代間対立、乗数効果、量的緩和、税の累進制と逆進性、賃金の下方硬直性……。
インフレターゲティングに代表される「裁量からルールへ」というトピックにも、わずかではあるが触れられている。
カバーされている範囲が広い分、広く浅くという感じで、一つ一つの話題に割かれている分量は少ない。
だが、これから学び、考えていくための足場としては、十分に役立つ本だと思う。